第1章 甲斐の虎
「へっ?!」
想定外の言葉に目が点になる
「お前が今言ったのだぞ?世話になっているから、恩返しがしたいと」
信長様がさらに面白そうに言う
「いや…でも…。恩返しとは言ってないし。そもそも私なんかが居たら足手まといでは?!」
「大丈夫だ。小さな諍いを治めに行くだけだ。政宗も家康も行く。俺がいるのだから恐れる必要はない。そもそも貴様に拒否権はない」
「うっ……」
その威圧する瞳に制され返す言葉がなくなり、「はい…」と、返事をするしかなかった。
「乃々。お前、信長様になんだその態度!!」
「だって……」
恩返ししたいなんて言ってないし…
「まぁ、信長様の言う通り大丈夫でしょ。あんたの腕見てみたいしね」
秀吉さんの注意されて、口を尖らせながら小さく文句を言ってると、
お手並み拝見とばかりに家康にまで追い討ちをかけられて、私は家康をキッと睨む。
「もう決まったことだ。明朝出立するから準備をしとけ。」
「はぁい…」
「乃々!!!!」
嫌々ながら返事をする私を見て、秀吉さんが再び声を荒げるのだった。