第10章 嫉心
「さ、乃々。仕上げの包帯をしよう」
信玄様が気を取りなしたように、器用にくるくる包帯を巻き
手早く、道具を片すと信玄様が懐から、紙包みをだした
「さて、じゃあ仲直りしてみんなでおやつでも食うか!」
「あっーーーーーーーーーーーー!!!」
その中身を見て、幸村が叫ぶ
「それ!!!その最中!!隠しておいたのに!!!」
「ん?これか?隠してあったかなー?最中が俺を呼んでたぞ」
「くそっ!!なんでバレたんだ!!あんたの嗅覚なんなんだよ!!」
「俺は甘いものと美人に関しては、犬にも負けない嗅覚を発揮できる」
「はぁっ?ふざんな!明日のおやつ抜きですからね」
「何だと!!幸!!お前!主君に対してなんてこと言うんだ!!」
幸村って、結構くだけた口調で信玄様に接するよね
「どうした? 乃々」
二人のやり取りを見ていた私の視線に気づき信玄様が、こちらを見る。
「大したことじゃないんですけど…ふたりのやりとりが主従っぽくないから…どんな関係なのかな?と思って」
「あー…まあ、そうかもな。信玄様は俺が子どもの頃からの付き合いだし、普通の主従関係とは違うかもしれねー」
「小さい頃の幸は可愛いかったなー。犬ころみたいにいつも俺の後ろついて来て…」
優しい笑みを浮かべながら、信玄様は幼い頃の幸を思い出してるようだった
確かに信玄様の幸村を見る目は、主君っていうより…
歳の近いお父さん?って感じかな
「信玄様は、なーんも変わらないっすけどね。女好きと甘いもの好きなとこ」
幸村は半ば呆れた感じで言う
信玄様の女好きは昔っからなんだ
幸村の言葉を聞いて、私も苦笑する。