第10章 嫉心
「えっ?!だ、出されてないよ!!!」
たぶん……
幸村って、こういうことは鋭いんだから…
さっきのことやあの月夜のことや…色んなことが頭を巡って、どもりながら答える
「じゃー、お前が手、出し…」
「出してない」
「悪…」
「悪女でもないから」
先回りして幸村の言葉を封じると
「お前…色気もないのに、なんで色んな男が垂らしこめんだ?」
幸村がこの世の七不思議だと言うような顔して呟いた
カチンッ!!!
なんっなの?!
そりゃ、彼氏いない歴二十四年だけど、色気ないとか…
この言われよう…
「幸村って……よく女心がわかってないって言われるでしょ」
怒りを越してすでに諦めに似た声で言うと
「男の俺に女のことなんてわかんねーに決まってんだろ。信玄様じゃあるまいし」
信玄様もこのくらい裏表がなかったら、翻弄されずに済むんだけど……。
……いや、そうなってしまったら、それはもう信玄様じゃないか
「まぁまぁ二人とも。本当に仲がいいなぁ〜」
自分に飛び火しないよう気配を消していた信玄様が、なだめるように口を開く
「…………」
元はと言えば信玄様の女垂らしが原因なのに…
さっきの甘い雰囲気は幸村の登場でかき消され、
私は内心ほっとしていた
危うく流されるところだった…
あのまま幸村が来なかったら……
失礼な奴だけど、今だけは幸村に感謝した