第10章 嫉心
信玄様の指先に掌を弄ぶようになぞられ…
その感覚に
ピクッ
身体が僅かに反応してしまう
それを信玄様が見逃すわけもなく、再び顔をあげ私を見つめる…
顔が赤くなり、自分の心拍数がどんどん早くなるのがわかる
せめてこの鼓動の音が信玄様には聞こえないことを祈った
信玄様の手が私の頬を撫で…………
親指が…唇をなぞる………
…信玄様の顔が……ゆっくり……近づいて……
逃げなきゃ……
頭ではわかっているのに、身体が言うことを聞いてくれない
……あ…………
信玄様の吐息が私の唇にかかる………
「お館様ーーーーー!!」
幸村の声が部屋の外から聞こえ
その声のおかげで唇が重なることはなかった
「……幸…か…」
信玄様が苦笑しながら、呆れたように障子の向こうをみた
「ここだ。」
「入りますよー」
信玄が短く返事をすると、幸村が書簡を抱えて入ってきた
「やっぱり乃々のとこにいた。探してたんすよ。頼まれてた兵糧についての報告書を渡そうと思って。どうせあんたのことだから、どっかの女のとこか乃々のとこだと思ってましたよ」
どっかの女にとこか、私のとこ…?
信玄様と情事をしていた女の人が脳裏に浮かんで
自分とあの時の女(ひと)を一緒にされたようでムッとした
私の顔を見て、信玄様が気まずい顔をする
「ちょっと…幸村。それって私に失礼じゃない?」
「あ?何が??お前、何?怒ってんの?」
ムッとして睨む私を見て、幸村が渋い顔して言い返した
「だ、だって!!私とあの女(ひと)と同じみたいに言うから…!」
「お前……もう、手、出されたのかよ」
ムキになって抗議する私と信玄様を交互に見ると、何か察したかのように聞いた