第9章 掴めない心
信玄の質問を受け、佐助は少し考えながら返事をした
「やはり彼女はずいぶんと織田軍の武将たちに大事にされていたようです」
「信長にもか?」
「…むしろ織田信長に気に入られたことで、いっそう織田軍の輪に溶けこんだようです。乃々さんがいなくなったことで、みんな怒り心頭でした。
ただ…織田信長の命で、今はこちらの様子を伺っているようです。」
夜伽もしない女を信長がそこまで気にいるとは…
信玄の目に憎しみのほかに、嫉妬とも言えない炎が灯る
「やはり織田軍にとって、価値のある女ってわけか」
本人にはその自覚が全くないようだが
そこがまた男心をくすぐるのか…
「あいつ…信長だけじゃなく、全員垂らしこんでんのかよ…!あんな顔して…やっぱ女ってこえぇー」
幸村が恐れをなしたように呟く
まぁ、幸が言ってることもあながち間違っちゃいない。普通の女ならそうはいかないだろ。
ただの可愛い女の子なだけじゃない…
本人は無自覚だが、妙な魅力があるのは確かだ。
実際…俺ですらあの子のことを掴めないでいる。
だからこそ……
ニヤリと笑う信玄を見て、謙信が眉をひそめた
「また悪い癖が出てるぞ、信玄。幸村、お前の主君をどうにかしろ。」
「謙信様。俺だってあんな信長まで垂らしこむような、怖ぇ女にちょっかいだすのやめろって言ってんですよ」
「美人を見たら口説くのは男の使命だ」
人生は短いんだ。敵の女だろうが、気に入ったもんは口説くさ。
そうじゃなきゃ、つまらねぇ
乃々を思うと、妙に心が浮き立つ
俺の周りにはいなかった類の女だからかな