第9章 掴めない心
ぽんと撫でられた頭を触る
信玄様といると、自分がまるで子供のように思える
いつだってあの人は余裕で…
私のこと揶揄って…ふざけて、誤魔化す
信玄様の本心はどこにあるんだろう
ほんと読めない人だな
はぁ…
考えるとなんかすごく疲れる
ふと部屋の隅の漆塗りの箱を見ると
信玄様の手拭いが畳んで置いてあった
鈴ちゃんが置いてくれたんだ
信玄様は返さなくていいって言ってたけど…
広げると鮮やかな橙色の手拭い
微かに信玄様のお香の残り香
私の血がついてるけど…
そこまで汚れてない
洗えば落ちそうかも。
一度洗ってみようか
そう思い立って部屋を出た。