第9章 掴めない心
そうだ。
手拭い…
まだ洗ってなかった
昨日、傷をおさえてもらった時に、私の血で汚してしまった手拭いのことを思い出した
「あの…信玄様。きのうお借りした手拭いなんですが…すみません。まだ洗ってないので…」
「あ?あぁ、あれか。特に返す必要はないぞ。さて姫君の手当ても終わったし、俺は戻って昼寝でもするか。謙信のやつにしこたま打ち込まれたからな」
そう言って最後のお饅頭を頬張る立ち上がると、うーんとひとつ伸びをする
「美女と過ごすひと時は、饅頭よりも甘いひと時だったよ。では、また明日お茶しよう」
私の頭をぽんと軽く撫でると、信玄様は部屋を出て行った。