第9章 掴めない心
「さ、手を出して」
思わず両手を引っ込めてしまったので、巻いてる途中の包帯が緩んでいた。
「はい…」
恥ずかしくてもう返事しかできない
なんであんな事してしまったんだろう…
考えても理由が分からない
信玄様のがうつったのかな?
赤らむ顔を隠すため俯向き続けた
「さ。できた。傷も化膿してないし、これなら早く治りそうだな」
使った道具を篭に手早くしまうと、もう一つ持ってきた紙包みを取り出した
「ほら。幸からくすねてきたおやつだ」
悪戯っ子のように片目をつぶる信玄様が紙包みを開けると、桜色した可愛いお饅頭を取り出し私に渡す
「わぁ。可愛い色」
「最近、城下で評判らしくてな。女子たちが話してたんだ」
一口食べると、ほどよい甘さが口に広がる
「美味しい…」
思わず笑みが溢れた
頭をフル回転させていたせいかな
頭に染み渡る
「乃々。美味そうに食うな」
そう言われて、信玄様の方を見ると優しく笑う信玄様と目が合った
少し恥ずかしくなって目をそらし、手当してもらった右手に目をやる