第8章 未来への帰り道
「本当に気にしないでください。もし、どこか具合いが良くない時は気軽に声をかけて下さいね」
「それがし、上杉謙信様に仕える家臣。名は吉江景資(よしえ かげすけ)と申します。織田の姫と言えども、この御恩は一生忘れは致しません。これは息子の与次になります。何かありましたら、何なりとお申し付けください。」
「与次と申します。お見知りおきを」
「景資さんと与次さんですね。しばらく厄介になりますので、こちらこそよろしくお願いします。」
二人が再び頭を下げるので、私も一緒に頭を下げる。
頭をあげると目が合い、思わず三人で笑った。
「乃々様には信長公も勝てないのでしょうなぁ…」
笑う私を見て、景資さんがしみじみと私を見て言う
「え?」
「のう。与次、そう思わぬか?」
「そ、そうですね。」
薄ら頰を染めた与次さんがと目をそらして答えた。
「与次にも、乃々様のような許嫁がおればこの老いぼれも安心なのですが。」
景資さんがため息混じりに言う
「父上!!乃々様は織田家とはいえ、姫であられますぞ!乃々様に失礼です!!!」
「うふふ。そうですよ。私なんかお嫁さんにしたら大変ですよ。」
「乃々様。父上の無礼、代わりに謝罪いたします。私と乃々様では身分が違いすぎるゆえ……ざ、残念です…」
へっ…? 残念…?
私がびっくりしてると、景資さんも驚いたのか与次さんの顔を見てる
「で、では、これにて失礼します」
与次さんは顔を真っ赤にしてそう言うと、景資を引きずるように連れて行った。
あれ?どういう意味?
残念…って、私、もしかして告白された??
私は与次さんの言葉の意味が理解できず、しばらくそこに立ちどまっていた。