第7章 満月に浮雲
「ところで城での生活はどうだ?何か困ってることがあったらなんでも言ってくれ」
「そうですね…自由にお城を歩かせて頂けることになったので、特には…」
そういえば…ちゃんとお礼してなかったな
「あ、あの…私なんかのために、謙信様へ進言して頂きありがとうございました。人質なのに自由にさせて頂いて…良かったんでしょうか?」
「そうだな…」
丁寧に頭を下げてお礼してから、改めて良かったのか聞いてみる。
心もとない月の光の中で、信玄様の口元が綻ぶのが見えた。
「人質の君を優しく丁寧に扱って、君を絆そうとしてるって言ったら、どうする?」
「はっ???」
ほ…ほだす?!
よく分からないけど…この人が言うと嫌な予感しかしない
「冗談だよ。君をあんな風にさらって、あんな思いさせたからな。せめてもの詫びさ。」
悪戯な瞳が私の反応をみて、ケラケラと笑う
人が真面目にお礼してるのに…
本当、掴めない人だ…
悔しいけれど、やっぱり翻弄されてばかりで信玄様のことが全然わからない
「し…信玄様は…何を考えてるか、全然わからないですね。」
「なんだ?それは俺に興味あるってことか?」
「ち…違います!」
「ははっ。乃々は面白いな〜」
「もう!!いいです!!」
付き合いきないと言わんばかりに、私は呆れて背中を向けた