第6章 宴にて
キョロキョロと辺りを見回す
うーん…どっちかな?
「どうした?」
声をかけられ振り向くとそこには信玄様が立っていた
「…信玄様」
心臓が高鳴る
「どこへ行くんだ?」
「あの…ちょっと手を洗いに…」
怪我した手を無意識に後ろに回す
「見せてごらん」
すぐに隠した手を掴まれると、信玄様の眉間に皺がよる
「これは…さっきの謙信の刀のせいか?」
「あ、いえ…私が咄嗟に払ってしまったので…」
「…おいで。こっちだ。手当てしてあげよう」
「え?!だ、大丈夫です。自分でできます。まだ宴も途中ですから…」
遠慮する私を信玄様が有無を言わさず、手を引いて歩き出す
「君の利き手は右だろ?どうやって左手で包帯を巻くんだ?」
「あ…」
「黙ってついてきて」
信玄様に諭され何も言えず、月明かりで照らされた廊下を黙ってついて行く
掴まれた手首から信玄様の熱が伝わってきて…
その熱に身体全部が犯されそうな感覚に襲われた