第1章 甲斐の虎
三成君も家康も敵対勢力がいるから気をつけてって言ってたけど…
違う意味で危険なこともあるかも…
もう少し見て回りたかったけど今日はもう帰ろう…
ちょっぴり名残り押しそうにしながら、城へ向かって行く
途中、流しの露天商が広げるゴザが目に入った
ゴザの上に朱色や黒で模様が描かれた櫛が沢山並んでいる。
「わぁ。可愛い」
「いらっしゃい。どうぞ見て行って下さいな」
露店のおじさんに言われるまま、しゃがんで色とりどりの櫛を見てると
朱色でシンプルに白い小花が描かれている櫛が目にとまる
「可愛い〜」
これいくらかな?
城から出てくるときに秀吉さんからお小遣い貰ったけど、お団子食べた残りで買えるかな?
この時代のお金の計算がまだできないんだよね
その櫛を手に取ってあれこれ考えているうちに、私はさっきの出来事をすっかり忘れていた
「この櫛…これで買えますか?」
そう言ってお金が入った小袋を店主に渡そうとしたとき、ひょいっと手に持っていた櫛を後ろから奪われた
「えっ…?」
びっくりして後ろを振り返ると、そこにいたのはさっきの男(ひと)だった