第1章 甲斐の虎
「ふぅ…」
一緒に出されたお茶を飲み干したところで
「随分美味しそうに食べるね。」
不意に声をかけられ
驚いて声のした方へ顔を向けると
斜め向いに座る男の人が楽しそうに微笑んでる
「え?」
この人私に声かけてるの?
キョトンとして周りを見回すけど、私しかいない。
「君に言ったんだよ。」
その男(ひと)は席を立つと、キョトンとしてる私にゆらりと近づいてくる。
「付いてるよ。」
そう言って、私の顎を持ち上げると親指でゆっくりと唇についたみたらしを掠めとり、その指をペロリと舐めた
…………
え……?
呆気にとられてる私にその男(ひと)が悪戯な笑みを向けると、私の胸が大きく高鳴った。
その高鳴りが周りにも聞こえてしまったんじゃないかと思えるほどで、さらに自分の顔が一気に紅潮してくのがわかった
年齢=彼氏いない歴の私には刺激が強すぎて
目の前がクラクラしそうになる
「あ、あ、あ…ありがとうございます?」
なんて言ったらいいか分からず、返事になっていないお礼のような言葉しか出てこない。
何も考えられない
胸のドキドキも止まらない
「どういたしまして。」
三成君とも違う、何とも色めいた微笑みを返しその人はお店を出て行った
何が突然のことに起きたのか分からず、しばし呆然とする私
「お嬢さん大丈夫かい?「色男にほだされたかい?」
揶揄う店主の声に我にかえる
「ご、ごごごご馳走さまでした。美味しかったです」
店主に赤い顔のまま、笑顔でお礼をして店を出る
はあぁ〜〜〜〜!!!!
びっくりした!!
あ、あんなことさらっとする人テレビの中だけだと思ってた…
いまだにおさまらない胸の鼓動に手を合わせ、掠めとられた唇に手を添えた