第6章 宴にて
本を読みふけっていると、鈴ちゃんが迎えに来た
「宴が始りましたので、乃々様も参りましょう。」
「え?もうそんな時間?」
本から目を離し外を見る
外はすでに美しい夕暮れから夕闇へ変わり、気づけば部屋も薄暗くなっていた
「どうしても行かないとダメ?」
やっぱり気乗りしない
私は仮にも敵国の姫…
そんな私が宴に参加なんかして、家臣の人たちだって楽しくないんじゃ…
「そんなに心配されなくても大丈夫ですよ。殿方たちは、織田の姫君を一目見たくてたまらないのですから」
怖気付く私に、鈴ちゃんが笑顔で言う
「え?なんか…それって…私を見てガッカリするパターンんじゃ…?」
「?ぱ、ぱたあん?」
パターンの言葉に鈴ちゃんが首を傾げる
「わ、私を見て、残念に思うんじゃないかと思って…」
慌てて言い直すと
「乃々様!もっと自信をお持ちください!
今日の乃々様は、そんじょそこらの姫様になんか負けない美しさですよ!」
興奮気味に言う鈴ちゃんが本心で言ってくれるのが分かる
「ふふっ。私にそんな気を遣わなくていいのに…」
「気など遣ってません?本当のことですよ?」
「ありがとう。鈴ちゃんは本当優しいね。鈴ちゃんみたいな友達?
歳が離れてるから、妹かな?いたら良かったな〜。」
鈴ちゃんにそう言って、笑顔を向ける。
勉強ばかりしてた私は、現代でも親友と呼べる子も特にいなかった
鈴ちゃんと出会って、初めて女の子同士の楽しさを知った気がする
「乃々様…」
「なあに?」
「乃々様はやっぱり優しくて美しい姫様です…」
そう言って、ちょっと照れ臭そうに嬉しそうに笑った