第2章 カカシ先生の指導
「うん、じゃあ男に免疫がなくても仕方ないね
…こっちおいで、花ちゃん」
ポンポンと、カカシ先生が自分の膝を手の平で叩いている
どうやら膝に乗れ、という事らしい
…もう修行は始まっているようだ
ゴクリと喉を鳴らし、覚悟を決める
『…はい』
だがそんな覚悟も虚しく、自分でも驚く程の消え入りそうな声しかでない
私は緊張で膝をガクガクさせながら先生のそばに近寄り、言われるままににっこり笑う彼の膝に遠慮がちに跨って向かい合うように腰を下ろした
(む、向かい合わせって)
とてもじゃないが、顔をまともに見ることができない
「初めての恋人役が、俺みたいなやつでごめんね」
『そんなっ!カカシさんは素敵な方です!!』
勢いで顔を上げると息が掛かるほど間近にカカシさんの顔があって、慌てて頬に手を当て目を伏せる
「カカシ、さん」
『え?!あっ、すいませ…つい
えっと今は、先生…ですよね、私ったら』
「いや、その方がいい、恋人らしくて
先生はなしでいこう」
カカシさんの指先が、そっと顎にかかって持ち上げられると、上がった視線がまた近くで絡まる
「恋人、だからね」
見つめられる視線に微かに甘い色が揺らめく
『か…かしさん、は、いらっしゃらないんですか?その、本当の恋人
も、もしいらっしゃったら、私修行とは言え、申し訳ない事を…その』
私の心臓はもう、早鐘のようになっていて最早これ以上耐えられそうもない
「ふふ、安心して
恋人なんていないから大丈夫
それに、仮にいたとしても、これは任務だ
君が気にする必要なんてないんだよ」
『…あ…』
その言葉にずきりと胸が痛む
「任務」確かにその通りだ
だけど心の中で告げられた事実に喜んでいる自分がいる
恋人はいない
「実際の任務でも、ターゲット相手に恋人さながらの演技をすることもある
それにもちゃんと慣れていかなきゃ、ね」
すると固まりきっている私に気付いたのか、彼はニッコリとまたいつもの優しい笑みを浮かべる
「ほら、俺相手にそんなに緊張しないの
もっとリラックスしなきゃ」