第1章 運命の歯車は廻り始める
あぁ、逃げないのではなくて逃げられなかったみたいだ。
さっき、彼が上から落ちて来た時に受け身をとって私を助けてくれたのだろう、よく見てみれば私が今馬乗りになっている状況だった。
耳に気を取られて私の状況確認は出来ていなかった、ごめんね。
でも、助けてくれるなんて案外良い奴みたいだ、落ちて来たのはそっちだけどね。
『あぁ…ごめんなさい、今退けま…』
「あっーー!!やっと見つけたっ!!
こんな所に居たのね、犬夜…って何してんのよ、あんた達…」
「ぅわっ、か、かごめっ!
お前早く退けっっ」
声の方を確認すると、さっきぶつかって来た女の子が息を切らして立っていた。
わっ、やっと見つけた!そう思って彼女に声を掛けようとすると、彼女の顔色がみるみる内に赤く染まり鬼のような顔に…。
え…なに、顔怖いよ…?
「ごめんなさいね、ちょっと危ないから…
犬夜叉の…いや、ソイツの近くから離れてて…」
『は、はいっ…!』
まるで般若の様な顔になっているので、過去1番か、ってぐらいのスピードで逃げ、近くにあった電柱の影から様子を覗く。
「いーーーぬーやしゃーーー…」
「ち、ちげぇって、何勘違いしてんのか分かんねぇけど、俺は何もっ」
「うるさいっっ!!!
おすわりっっっ!!!!!」
「ふぎゃぁっっ!!!」
ドコーーーンッッ!!!!
えっ…な、なんだ、今の凄い音は…。
地震が起きた訳でも何かが爆発したでもないのに凄い音がした。
恐る恐る土煙が上がっている所へと確認の為近付くと
先程まで私と話していたであろうあの男が土下座ポーズのまま地面にめり込んでいる。
「ぐっ…か、かごめ…てめぇ…っ」
意識はあるみたいだが、地面が割れる程の土下座…?
『えっ…えぐいっ…』
一体何があったのだろうか。
彼女の方へ視線を移す。
「ふんっ、逃げ出した罰と女の子と卑猥な事をしてた罪よ、当然だわっ」
どうやら彼女の仕業らしい。
え、怖…何者。