第7章 夏の風 ―ユキside―
夕食の席には、豪華な料理が所狭しと並んだ。
唐揚げ、回鍋肉、揚げ出し豆腐、麻婆茄子、ポテトサラダ。
「はい、これもどうぞ」
舞がほうれん草のお浸しを運んでくる。
「すごいうんまいよ!舞ねーちゃん料理得意なんだね!」
「あー…、これ、ほとんどお父さんが作ったの。うちで一番料理上手なの、お父さんなんだ」
「へー!確かにハナちゃんは……だったもんなぁ」
語尾の声を抑えながらジョージが舞に耳打ちする。
ハイジが倒れた日の翌日。
ハナちゃんに朝飯を作ってもらったはいいが、カケルと王子以外は腹を下してしまったのだ。
あの苦い出来事は記憶に新しい。
「まだまだあるぞー!俺の特製レバニラ!野菜増し増し!」
キッチンでは勝田さんが豪快にフライパンを振っている。
「お父さん、ユキくんと話してからご機嫌なの。張り切ってるからいっぱい食べてね」
「おう」
折角作ってもらっているから、なんて気を遣ったわけでもなく、勝田さんの料理は本当に美味しくて、男だらけの食卓の前ではあっという間に全ての皿が空になってしまった。
夕食後は明日の練習のミーティングを行い、やっと床につくことができる。
昨日は早々に眠りについたけれど、今夜はそれはもったいない。
「あれ?ユキくんまだ起きてたの?」
リビングのソファーでテレビを見ていたところに、風呂上がりの舞がやってきた。
他の連中はすでに夢の中だ。
「ああ。少し舞と話したくて」
「嬉しいけど…大丈夫?体」
「舞で充電するから大丈夫」
「……うん」
俺の隣にやってきた舞は、ソファーに腰を沈めた。
「3日間だっけ?ここにいられるの」
「そう、お店がお盆休みの間だけ。私たちで食事の準備や洗濯はするから、みんなは練習に専念してね」
「何か悪いな。雑用みたいなことさせて」
「とんでもない!みんなの役に立てるんだもん。張り切ってるくらいだよ。明日の夜は何食べたい?」
「そうだなぁ…」
3日間、舞と一緒にいられる。
旅行でも何でもないのは色気がないが、この際そんなことはどうだっていい。
朝起きたらすぐに舞に会えるということ。
それだけで、明日から俄然頑張れそうだ。