第6章 願い叶えて
「あと30秒!神童さーん!」
「ユキさーん!」
ゴールに近づいてくる二人。
ムサくんの手の中のストップウォッチの数字は、刻々と16分30秒に近づいている。
大丈夫。行ける。あの二人なら…!
「神童くーん!ユキくーん!頑張れーっ!」
ラストスパートをかけた二人が、同着で白いゴールラインを踏んだ。
その瞬間を見届け、逸る気持ちでタイムを確認する。
「ムサくん!!」
「…16分29秒、です!」
16分、29…
「やった…!やったーっ!神童さーん!ユキさーん!」
「よっしゃーぁ!!公認記録クリアだー!!」
「きゃー!すごーいっ!」
輪になってはしゃぐ葉菜子たち。
その隣で、ムサくんと感動を噛みしめる。
「すごい…すごいすごい!本当に…!」
「ええ。ユキさんと神童さんは有言実行の二人ですから。それに、舞さんの応援があったからですよ」
「え?そんなことないよ!」
「声援というのは、ランナーにとってとても力になるものなんですよ。応援している人が思っている以上に。ハイジさんも言ってましたでしょう?」
ムサくんの声は心地良く胸に染みる。
本当にそうなのだとしたら、嬉しい。
少しはみんなの役に立てたのかな…。
ゴールの脇では、ハイジくんにカケルくん、神童くん、ユキくんが、4人でじゃれ合うみたいに抱き合っている。
おめでとう、神童くん。
そして…
ユキくんが私たちの方に向かって、ガッツポーズをしてくれる。
私も大きく頷きながら、手を振り返した。
おめでとう、ユキくん―――。
キングくん、先輩、王子くんは惜しくも公認記録を逃してしまったけれど、自己ベストはまた更新することができた。
予選会のエントリーまでは3ヶ月ある。
記録会はまだ何度もあるし、悲観しなくていい。
―――今回の記録会が終わった後の、ハイジくんの言葉だ。
ここまでハイジくんを信じてやってきた、アオタケのみんな。
キングくんも先輩も、王子くんも。
帰る頃には、もう次を見据えていた。