第1章 ふわり、舞う
メンバーを口説き落とすことに成功したのか、アオタケの皆は朝のジョギングを始めたらしい。
私たち姉妹も早速そのお手伝いをすることになった。
アオタケから多摩川まで、約5km。
タイムの計測に記録と、要はマネージャーの真似事をする。
一昨日は葉菜子が朝練に付き合っていて、「みんな優しくていい人たちだった」と楽しそうに話してくれた。
初めて会うハイジくんの仲間たち。
私は葉菜子みたいにコミュニケーション能力が高くはないから、ちょっと緊張気味。
早朝、まだ空がうっすら白いうちからジャージに着替え、ストップウォッチを首から引っ掛けて、自転車でアオタケに向かった。
「おう、舞ちゃん。おはよう」
「おはよう、ハイジくん」
自転車を走らせて数分。
到着したアオタケの門の前には、ハイジくんの姿があった。
「朝早くから悪いね」
「ううん、大丈夫」
「はい、みんな注目ー!ハナちゃんのお姉さんの勝田舞さんだ。ハナちゃん同様、練習に付き合ってくれることになった」
「勝田舞です。よろしくお願いします」
沢山の視線が一気にこちらへ集まる。
少しぎこちなく挨拶をすると、「しゃーっす!!」と威勢のいい声とともにみんながお辞儀をしてくれた。
「軽くメンバーを紹介しておこうか。まずは新入生3人。うちのホープ、蔵原走(カケル)」
カケルくんと呼ばれた黒髪の男の子は、無言でペコリと頭を下げた。
「次に、双子の城太郎と、城次郎」
「うひょーっ!ハナちゃんのお姉さん!?JKに加えて年上のお姉様まで…!!」
「俺、ジョータって呼ばれてます!こいつはジョージでいいよ!」
瓜ふたつの顔の二人が私の目の前にやってくる。
声や髪型まで、本当にそっくり。
「「よろしく、舞ねーちゃん!」」
人懐っこい二人のおかげで、緊張が解けていく気がした。
「こっちが2年生。タンザニアからの留学生、ムサ・カマラ。と、マンガ研究会所属の柏崎茜。ニックネームは "王子" 」
いかにも走るのが早そうな黒人のムサくんは、礼儀正しく腰を折る。
女の子みたいな綺麗な顔をした色白で華奢な王子くんも、軽く会釈をしてくれた 。