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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第2章 愛のオムライス



意外だった。
アオタケの炊事を担当しているくらいだから、過去の彼女にも当たり前のように振舞っているものだと思っていた。

「しばらく彼女いないしな」

「そっか…」

ハイジくんは人当たりがいいしイケメンだし、優しいし。
モテる要素しかないと思うんだけど。
あ、でもユキくん曰く "残念イケメン" なんだっけ。
でも残念要素ってどこだろう。
いつもジャージなとことか?
冬場、 はんてん着てフラフラしてることもあるからもしかしてそれを指してる?
知り合ってから丸三年。ハイジくんの残念ポイントを探してみるけれど、私には特に思い当たらない。

「じゃあ次に彼女できた時に作ってあげたら?絶対惚れ直しちゃうよ」

「そうだな」

言葉少なくそう返したハイジくんは、食後のお茶の準備を始めた。





私が作ったのはシンプルなバタークッキーと、抹茶のクッキー。
ハイジくんは「洒落た飲み物がなくてごめん」なんて笑いながら、慣れた手つきで急須に緑茶を淹れてくれる。
湯呑みに注がれたそれを飲みながら、二人でクッキーを摘んだ。

「うん!甘さ控えめで美味いよ。舞ちゃんがお菓子作り得意だとは知らなかったな」

「お菓子全般ってわけじゃないんだけど。良かったらみんなにも食べてもらって?」

「きっと喜ぶよ。ユキが特に抹茶味のもの好きなんだ」

「…ほんと!?」

ユキくんの名を耳にして、思わず身を乗り出してしまう。

「…ああ」

目の前にある二つの瞳は丸くなり、湯呑みを口に運ぶ手が止まった。

「あ、ごめん。急に大きな声出して…」

「いや」

なんとなく気まずくて、緑茶をひと口啜る。


やっぱり、ちゃんと可愛いラッピングを用意してこれば良かった。
大皿に山盛り乗せてきたクッキーを眺めつつ、なんて色気がない光景だろうと少しばかり後悔する。

「双子に食い尽くされる前に分けとくか」

食器棚からお皿を出してきて、ハイジくんはクッキーを9等分する。

「ユキの皿には抹茶のを多めに、だな」

「うん」

アオタケメンバーの分を確保したところで、私たちは残りのクッキーを平らげた。


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