第2章 愛のオムライス
「それは俺たちの分。あと、夕飯のもついでに揚げちゃおうと思ってさ」
男の人10人分の唐揚げ…。すごい量だ。
揚げ物用の鍋二つに油を張って、同時に揚げている。
「腹減ってるだろ?味見してみる?」
「いいの?」
「いいよ」
既に油切りを済ませた小さめの唐揚げを、ハイジくんは菜箸でつまみ上げた。
「ほら」
「え?」
口を開けろと言わんばかりに、私の唇に唐揚げを近づける。
「あの…」
「ん?」
なかなか食べようとしない私を不思議そうな顔をして見つめてくる。
なんか…恥ずかしいんだけど…!
平気でこういうことしてくるハイジくんには、恐らく恥ずかしいなんて気持ちは伝わっていない気がする。
というか、美味しいものを食べさせてあげたいっていうお兄さん的精神とか?
カケルくんや王子くんにも同じことをしそうだ。
「いただきます…」
意を決して、パクリとかぶりつく。
「…美味しい!」
シンプルな醤油味の唐揚げ。
生姜とニンニクの風味も鼻を抜けていく。
「よかった。もう一つ食べるか?」
嬉しそうに笑ったハイジくんはまた唐揚げを摘もうとするけれど…
「あ!味見はもう十分!あとでゆっくりいただきます!」
「そう?」
食べさせてもらうのは、一度だけでも恥ずかしさの限界。
丁重に遠慮させてもらった。
「よし。じゃあオムライスに取り掛かかるか」
油から大量の唐揚げを掬い上げたハイジくんは、次に卵とフライパンを取り出した。
「葉菜子もハイジくんのごはん食べたかったって、ガッカリしてたよ」
「先約があったんじゃ仕方ないな」
姉妹でお呼ばれしていたけれど、葉菜子は今日、友達とショッピングの約束があるらしく。
残念そうな顔をして昼前に出かけていった。
だからテーブルの上にはオムライスが二人分。
しっかり火の通った薄焼き卵で先程のチキンライスが器用に巻かれている。
おしゃれなカフェで食べるような、ふわとろ卵のオムライスも美味しいけれど。
昔ながらのこういうオムライスも馴染みがあってホッとする。
「ハイジくん卵で包むの上手だねぇ。私なんていっつも破れてチキンライスこぼれてきちゃうよ」
「俺だって失敗するさ。今日はたまたま上手く出来たんだよ」