第2章 愛のオムライス
ツツジの季節。暖かく、日によっては汗ばむ陽気だったりする今日この頃。
朝ジョグのあと、ハイジくんはニラとともに商店街までやってきた。
「日曜朝市」と称して隣のお肉屋さんが大安売りをするこの時間、ハイジくんは決まってお肉を買い溜めしにくる。
まるで主婦の鑑のような人だ。
「ほんとハイジくんはしっかりしてて!お料理も上手なんでしょう?」
「いえいえ、自己流ですから。食べるのはうちの連中だけですし適当ですよ」
「またまた!そんな謙遜して!」
うちに立ち寄ってくれたのをいいことに世間話で引き止める母。
それに嫌な顔せず付き合ってくれる、どこまでも主婦力の高いハイジくん。
ユキくんに言わせると、アオタケのみんなはハイジくんのごはんで飼い慣らされている、らしい。
そんな話を常々聞いてるから、私も興味津々。
「ハイジくんのごはん、一度食べてみたいなぁ」
「じゃあ、昼飯食べに来る?」
「え?」
「今日はみんな家を空けてるんだ。自分のためだけに飯を作るのってつまらないだろう?良かったらハナちゃんと一緒においでよ」
「…ほんとにいいの?」
「もちろん」
「だったら私、おやつにクッキー焼いてく」
「それは楽しみだ」
料理の腕は人様に披露できるようなものじゃないけれど、クッキーなら自信がある。
またお昼に、と約束をして一旦別れ、早速クッキー作りを始めた。
時刻が時計のてっぺんを指す頃。
お皿に乗せた大量のクッキーをお弁当用のトートバッグに入れ、アオタケへ向かう。
可愛いラッピングでもあれば良かったのだけれど、急遽お呼ばれすることになったので、こんなご近所にお裾分けを持っていくような格好になってしまった。
「いらっしゃーい!手が離せないから入って来てー!」
玄関の引き戸を開けて挨拶をすると、ハイジくんのよく通る声が返ってくる。
上がってすぐ左手が台所らしい。
中ではハイジくんが揚げ物をしている。
「こんにちは。何か手伝う?」
「大丈夫」
クッキーをお皿ごとテーブルに乗せて、ハイジくんのそばに歩み寄る。
「オムライスにしたんだ。あとは卵で包むだけ」
「わ、オムライス好き。そっちは唐揚げ?」
作業スペースにはこんもり盛られたチキンライス。
出来たてらしくふわふわ湯気が漂っている。
脇には、唐揚げとキャベツ。