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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第14章 スタートライン



「俺が走り切るって、信じてんの?」

「当たり前でしょ?私の彼氏は世界で一番かっこいいんだから」

「…舞は、世界で一番の味方だな」

ユキくんの手が私の背中に回される。
それから、小さくキス。

「今日の舞、すげぇ綺麗」

「え?」

「ちゃんと言ってなかったから」

「…ありがとう」

真面目な表情で改まって言うものだから、顔に熱が灯ってしまう。

「よく考えたら他の連中よりラッキーなんだよな、俺。舞がそばにいてくれるんだからさ」

「そう思ってくれるなら嬉しいけど」

「何か急にみんなに悪い気がしてきたわー。俺だけ彼女持ちでゴメンなーって感じ?」

いつもの調子に戻ってきたと思ったら、謎のマウンティング…。

「ジタバタしたってやるしかねぇよな!意地でも繋ぐよ、襷」

「うん。見てるからね」

「おう。箱根が終わったら、頑張ったご褒美くれる?」

「いいよ。何が欲しい?」

「うーん。考えとくわ」

そう言っていたずらっぽく笑う姿は、もう普段通りのユキくんだった。





「こんだけ神頼みしてるとさ、いいかげん神様にウザがられてるかもな。俺なんか二回参拝してるし」

「私もさっき、しつこいくらい心の中で繰り返したよ。欲深い人間の願いは聞いてもらえなかったりして」

「まあ、神様も慣れっこだろ」

参拝も済んだし、神社の中もひととおり見て回った。
そろそろ帰ろうかというタイミングで鳥居のそばに絵馬を見つけたので、最後に願い事を書き込むことに。

「書けた」

「私も」

寛政大学の必勝祈願を、一文字一文字丁寧に記した。
ユキくんが書いた絵馬も覗いてみる。


"舞と、ずっと一緒にいられますように"


え…?
私のこと…?

ユキくんは少し照れたようにすぐにそれを掌の中に納めてしまう。


「駅伝のことじゃなくていいの…?」


「それはもう二回頼んだし、舞が絵馬にも書いてくれただろ?だから十分。
ずっと二人でいたい。今日、しみじみそう感じた」


「……私も。いつだって、そう思ってるよ」



ずっと、一緒に―――。



明日も、明後日も、その先も。
ユキくんのそばには、私がいるからね。



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