第14章 スタートライン
そう言えば、アオタケのみんなはきっと忘年会で盛り上がっている頃だ。
飲み過ぎていないかな?
夜中でも変わらず賑やかなんだろうな。
騒がしい液晶画面から意識を逸らしてそんなことを想像していたら、心の声が聞こえていたかのようにユキくんからの着信音が鳴った。
「もしもし?」
『悪いな、遅くに。双子がさぁ…』
『舞ねーちゃん!俺!ジョージ!こっちのみんなと電話でカウントダウンしない?』
電話越しに揃ってカウントダウンなんて、何事も楽しむジョージくんたちらしい発想だ。
「いいね、それ。ここに葉菜子もいるから。スピーカーにするね」
『ハナちゃーん?こちらジョータでーす!』
「え?ジョータくん?カウントダウン?楽しそう!やるやるっ!」
まるでアオタケの宴会部屋にいるような気分だ。
テレビに映し出された大きな数字を頼りに、うちの両親も巻き込んで通話越しのカウントダウンが始まった。
『「5、4、3、2、1…」』
スマホの向こう側のアオタケメンバーと、私たち家族の声が重なる。
そして……
『明けましておめでとうーっ!』
『今年もよろしくーぅ!』
『じゃあ挨拶も済んだことですし、僕はお先に休ませて…』
『何を言っている、王子。今から初詣に行くぞ』
『えー…』
『遂に明日だ!!やるぞぉぉお!!』
『キングうるせぇ!』
みんなの声が矢継ぎ早に聞こえてくる。
こちら側も順番に挨拶をして、最後に私の手にスマホが渡った。
「今年もよろしくね、みんな。おやすみなさい」
こんなに賑やかに新年を迎えるのは初めてだ。
後を引く幸福感と、明日に迫る本番への緊張感に包まれる。
さっき睡魔に襲われていたのが嘘のように、この後ベッドに入ってからもすぐに眠ることはできなかった。