第13章 予選会
ハイジくんとカケルくんはすぐに第一集団まで追いついた。
私たちはトップの選手がやって来る場所へ先回りして、2周目に入るタイミングを測定する。
「先頭2分49秒ペース!引きずられないでー!」
葉菜子の声に気付いたハイジくんとカケルくん。
目の前をアオタケのみんなが順番に通過していく。
「今のペースキープ!葉菜子、給水地点に行ってくるね!」
「わかった!私もすぐ行く!」
観客でひしめき合う中を掻い潜り目的の場所へ走る。
しばらく待っていると、選手たちの塊が見えてきた。
均一に並べられた水を流れるように手に取り、私の目の前を次々に横切っていく。
途中でペースを上げたらしいカケルくんと、数人挟んだ後方にはハイジくん。
「ここまで全員、3分10秒以内!」
私の声はちゃんと届いたようで二人とも小さく頷いた。
敷地内を2周し終えたら、その時点で約5km。
順調に目標タイムを維持出来ている。
この先は一般道へ出て、周囲のペースを考慮しつつ各々の判断でレースを展開していくことになる。
次にやって来るはずなのはムサくんと城兄弟だ。
そろそろ姿を現すだろうかと目を凝らして探していると、すぐそばで大きな音が響いた。
「!?」
給水用の紙コップが乗る机に足を取られた選手が、転倒したのだ。
うずくまったままでいるその選手のすぐ後ろからは…
「ハイジくんっ!!」
転倒に巻き込まれるかと思いきや、咄嗟に避けてその事態は防いだ。
けれど今、故障した右足から着地した…。
走り去っていく後ろ姿をしばらく見守るが、いつものフォームと特段変わりはない。
ただ、まだレースは始まったばかり。
この先を思うと不安が募る。
「お姉ちゃん!ハイジさん今…」
「うん…」
追いついた葉菜子も一連の出来事を見ていたようで、心配そうにハイジくんの行く先を眺める。
気を取り直して葉菜子の肩を叩いた。
「きっと大丈夫。一瞬体勢崩したけど持ち直したし。応援しよう!ほら、ジョータくんとジョージくん来るよ!」
「あ、ほんと!ジョータくん!ジョージくん!ムサさーん!ファイットーッ!!」
「ユキくん!神童くん!頑張れーっ!!」
後続の5人が通過したあと数十秒置いて、ニコチャン先輩とキングくん。
そして、王子くん。
無事に全員が一般道へ出ていった。