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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第13章 予選会



これだけ大勢の人の中から寛政大の選手たちを探し出すのは困難だ。
きっとウォームアップ中ならスマホも持っていないだろうし…。
とにかく四方を見渡しながら、ターコイズブルーのジャージに目を配る。

「お?あれじゃねぇか?アオタケの連中!」

双眼鏡で周囲を覗いていたお父さんがみんなを見つけたようだ。
視線を辿った先にいるのは確かにユキくんたち。
関係者しか入れないその場所は、私たちが今いる位置からは程遠い。

「頑張って…」

顔を見てそう言えないのは残念だけれど仕方がない。
ついに降り出した雨が視界を悪くさせ、より緊張を煽る。

「ハイジさんは、10人の合計タイムが10時間12分台ならイケるって言ってたけど…」

事前のミーティングでおおよその目標タイム、順位などは確認済みだ。
ハイジくんやカケルくん、ムサくんは特に終盤でスプリントをかけられる選手だから、できる限りタイムを稼ぐつもりではいるらしい。
とは言っても走るコースの長さと条件は皆同じ。
その距離は20km以上ある。

「1kmなら3分ちょっとってとこか。ユニフォーム着てる奴の数が違うな」

「予選会は最大で1チーム14人まで登録できるんだって。そこから体調を考慮して当日12人に絞るの」

お父さんと葉菜子の会話に改めて身が引き締まり、胸の拍動が速くなっていく。

選手が多いチームは2人分の保険を掛けられるが、寛政大はそうはいかない。
10人ジャスト。
一人でもゴール出来なかったら、その時点で箱根への道は絶たれる。


『選手の皆さん、スタート地点に集合してください』


滑走路を走って馴らしていた選手たちが、場内のアナウンスで一同に集まってくる。
私が緊張している場合じゃない。
みんなのこと、しっかりこの目で見ていなくちゃ。


『スタート、30秒前!』


ストップウォッチを構える。
カウントダウンを始めた場内のアナウンスに耳を傾け、集団の後方にスタンバイする寛政大のスタートを見守る。


『5、4、3、2、1…』


パァーンッ―――!!


地響きが足の裏を伝わってくる。
それに加え、各校の声援、応援団の楽器の音。
私たちの声なんて簡単に掻き消されてしまうとわかっていても、叫ばずにはいられない。


「「行けーっ!!寛政大学ー!!」」


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