第12章 共に見る夢 ―ユキside―
流石だ。榊の煽りだろうが豪ちゃんのツンデレだろうが華麗にスルーしていくハイジスタイル。
「はあ…」
豪ちゃんも勢いに押されて返事を漏らす。
舞に好意を持っている点については様子見としよう。
俺たちを別れさせようとか、そこまでの過激さは感じられないし。
ハイジの餌食になる豪ちゃんを眺めながら舞がこっそり耳打ちしてくる。
「豪ちゃんの憎まれ口、ただの照れ隠しだからね」
「わかってるよ。恋敵の俺にあんなこと言えるなんて、ちょっと見直した」
「……恋敵?豪ちゃんが私のこと好きって言いたいの?…ふっ、あははっ!ないない!」
「いや、あるだろ…」
「だって豪ちゃん、彼女いるよ?」
「……え」
青天の霹靂。
寝耳に水。
藪から棒。
今、なんつった…?
「はあっ!?彼女っ!?」
「うん。大学の時から付き合ってるから結構経つと思う」
「え…、え!?じゃあ…舞に対するアレコレって…」
舞への態度は?
俺に向けられた台詞は?
思い出せる限りのことを振り返ってみるが、あれが恋愛感情ではない…だと…?
「お姉ちゃーん!そろそろ帰ろっかー」
「つまんねーなぁ。一緒に宴会参加してけばいいのに」
「だよなぁ!ハナちゃん帰っちゃうの寂しいぃ~!」
脳の処理機能がバグっている中、ハナちゃんと双子が二階から降りてくる。
「ごめんね。私もお姉ちゃんも明日朝早くて」
「じゃあ祝勝会には絶対来てよね!」
「もちろんっ!約束する!」
「指切りしよ!ゆーびきーりげーんまーん♪」
ここは幼稚園か…?
ハナちゃんを真ん中にして三人で指切りを始める始末。
呆れる俺とは対象的に、それを見ていた豪ちゃんの形相が変わった。
「おい、葉菜子。誰だこの双子は」
「あれ?豪ちゃん何でいるの?」
「配達だよ。で、誰なんだ?」
「ジョータくんとジョージく…」
「名前を聞いてるわけじゃない。まさか…どっちかが彼氏なんてこと…」
「ええ!?違っ…!」
「だよな…。彼氏なんて早いよな」
「む!早くなんてないよ!もう高校生なんだから!」
「 "まだ" 高校生だろ!」