第12章 共に見る夢 ―ユキside―
「え?いいんですかぁ!?嬉しいなぁ!」
またもやクソ呑気ハイジ。
この兄ちゃんが纏う気まずい空気を読め!
いや、敢えて読んでいないのか…?
「豪ちゃん…」
俺たちのやり取りが聞こえたのか、舞がやって来た。
「舞…。俺は、舞の夢なら応援したいと思ってるからな。いつでも味方だ」
そう告げる豪ちゃんの表情は真剣そのもの。
「うん…。ありがとう」
応える舞の表情も。
恐らく、これまで築いてきた関係もあるだろう。
ずっと舞のことを大切に思ってきたんだもんな。
多くを語らなくても、舞に気持ちは伝わったようだ。
「祝勝会で旨い酒が飲みたかったら、せいぜい予選通過しろ」
舞への優しい物言いが嘘のように、俺に向かって激励(なのか…?)の言葉が投げつけられた。
さっきの「この間は…」の続きはこっちももう察しているわけで、これ以上は何も言うまい。
「残念会になったらご愁傷さまだけどな!」
素直じゃねぇなぁ。
ストレートに「ごめんね」って言えば「いーよ♡」って返してやるのに。
こんなツンデレのテンプレみたいな奴、初めて見た。
「なんだよ、豪ちゃん。なんだかんだ応援してくれるんだな。やっさし~い!」
「おまえに豪ちゃんとか言われる筋合いねーわ、青白メガネ。顔色ワリィんだよ!」
「人が気にしてることを…。俺のは美白だよ、美白!せっかく豪ちゃんちに酒買いに行こうと思ってたのに。一人客逃したなぁ?」
「駅前にコンビニあるからそちらでどうぞ」
「こいつ…ほんとに商売人かよ…」
ニコチャン先輩への差し入れを豪ちゃんちで買おうか、なんて思ったのも束の間、憎たらしいことを言いやがる。
「ユキ、甘利さんと知り合いだったのか。差し入れありがとうございます。さっそく今晩いただきますね」
「…大丈夫ですか?予選会、明後日ですよね?」
「まあ、これがうちのスタイルなんで。舞ちゃんちの野菜で栄養もつけて…あ!!
八百勝の "勝" に、甘利酒店の "利" 。合わせて "勝利" じゃないか!縁起がいいぞ! 」
「おお!マジだ!って、何かこじつけっぽくね?」
「そんなことないさ。きっと勝利は俺たちのものだ。あ、甘利さん、日テレで予選会放送されるので。ぜひ見てて下さいね」