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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第12章 共に見る夢 ―ユキside―



何…こんなに可愛いこと言うのかよ…。

「寂しかった?」

「ちょっと」

「わりぃ。ガチ読みしてた。けど勧めてきたのは舞だろ?」

「だよね…。だからワガママだよなぁと思って、しばらく我慢してた」

漫画を閉じて、舞と向き合う。

「全然ワガママじゃねーし。続きは王子から借りて読むことにする」

「気に入ってくれたんだ?」

「まーな」

舞の体に腕を回し、ギュッと抱きしめる。

「こういう時間もいいね」

「ん?」

「どこかに遊びに行くとか、何か食べに行くとかじゃなくても。おうちデート、楽しい」

「また来いよ」

「うん…。でもアオタケはみんなの家だから。気を遣わせちゃったら悪いし」

「ここ壁薄いしなぁ。声も漏れるだろうしエッチなことはできねーかな」

「……そういう意味で言ったんじゃないけど」

「それは失礼」

「ふふっ。それ、王子くんのマネ?」

舞の言うとおりだな。
こういう時間もいい。
ていうか、こういう時間が、すごくいい。
部屋の中で漫画を読んだり、触れ合ったり、他愛もないお喋りをしたり、冗談言い合ったり。

めちゃくちゃ満足だ。


「キスならいいよな」

「…うん」

ふっくらとした唇に、俺のを重ねる。

「何か、甘い?」

「あ、ごめんね。リップかも」

「バニラ?」

「そう。一旦ティッシュでオフした方が…」

「いいよ、そんなの」

気にする舞に構わず何度もキスをする。
二人きりの竹青荘なんて、かなりレアだ。
誰かが帰ってくる前に、時折漏れ出す舞の吐息も潤んだ瞳も、他の奴らに気取られることなく独り占めしたい。

控えめに差し出される舌が俺の中を滑っていく。
日が落ちて暗くなった帰り際、軽くキスすることはあるけれど、こんな風に深く絡まり合うキスは久しぶりで。
バニラの甘い香りと、耳に届く湿潤した音。
舞が病み上がりでなければこのまま服の中に手を差し入れてしまいそうだ。

まあでも…少し触るくらいなら…

欲と理性の間で揺らぐ心が、俺の指をほんの少し動かした。
舞の脇腹をそっと撫でながら、上へ上へ…


ガラガラッ――


玄関の扉が開く音だ。


ピタリと腕が固まる。
我に返ったような舞の瞳と目が合った。


誰だ―――?


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