第12章 共に見る夢 ―ユキside―
「取りあえず、中に入ろう」
さめざめ泣く舞の手を取り、俺の部屋まで連れてきた。
「酷い…!あんなこと言うなんて…!」
畳に座らせて、落ち着かせるため背中を撫でてみる。
…が、しゃくり上げながら肩を揺らす様を見るに、落ち着かせるどころかすぐには治まりそうにない。
「舞まで怒ることねぇのに。これからも付き合いあるんだろ?」
「そんなの関係ないよ!何であんなこと…」
「商店街の人たちはみんな応援してくれてるからなぁ。ああいう言葉が舞の耳に入ったのは初めてか?」
「…どういうこと?」
「大学ではそういうことコソコソ言う奴もいんの。慣れてるよ、俺らは」
「そんな…」
初耳だと言うように眉根を寄せて、俺をジッと見る。
「それに豪ちゃんのはまるっきり本心ってわけじゃない気がするけど。舞を心配するあまり口が過ぎただけじゃね?」
「だからって言っていいことといけないことあるでしょ。みんなの努力も知らないで!」
「知らないからこそ好き勝手言われてもしょうがねーじゃん?」
「もう!ユキくんももっと怒りなよ!」
「俺たちの事わかってくれる人はちゃんといるんだからさ。それで十分」
背に当てた手にグッと力を込め舞の体を抱きしめた。
「だって、悔しいもん…」
絞り出すような声を漏らして、舞は俺の肩に顔を埋める。
「俺は嬉しいよ。舞がこんなに怒ってくれて。舞さ、"みんなを馬鹿にしたら許さない" って、言ってくれただろ? 」
「うん…」
「舞のそういうところが好きだなって思ったんだよ。このチームを大切にしてくれてるって、すんげぇ伝わった。俺の大事なもんを大事にしてくれる気持ちが、嬉しかった」
黙って俺の言葉に耳を傾ける舞を、もう少しだけキツく抱きしめる。
少し顔を傾け、赤くなった瞳を覗いた。
「ちょっとは落ち着いた?」
「ん…。私ばっかりカリカリして子どもみたい…。ユキくんて肝心な時には対応が大人だよね。ジョータくんたちにはすぐキレるのに」
「ひと言余計だ」
頬をムニッと抓ると、ようやく舞は笑ってくれた。