第12章 共に見る夢 ―ユキside―
『でも葉菜子のことも同じように溺愛してるよ。いつまでも私たちを子ども扱いして。いいお兄ちゃんなんだけど、時々愛情が過剰なんだよね…モンペみたいになっちゃって…』
モンペ…?
そりゃ違うだろ。
やっぱわかってねーわ、このお嬢さん。
「まあいいや、豪ちゃんのことは。考えるのダルい」
『……もしかして、何か言われた?』
「いや。別に。それより、舞に会うの、随分久しぶりな気がするよな」
余計なことを勘づかれないうちに話題を変える。
『明日の夕方まで長いなぁ。早く、ユキくんに会いたい』
俺を恋しがってくれる声が、可愛く耳元で囁く。
きっとそばにいたら俺の肩に頭をすり寄せながら、腕を絡ませて甘えてくるんだろうな。
何の気なしに口からこぼれた言葉かもしれないけれど、すごく…もうめちゃくちゃ鷲掴まれた。
「舞、一旦電話切っていい?」
『え、うん』
「10分後にかけ直す」
通話をオフにした後上着を一枚羽織り、玄関の外に出る。
初秋の夜の外気はひんやりしていて、風が吹くと身震いしてしまうほどだ。
舞と出会った頃は桜が咲いていたのに、今は木々の枝も一枚ずつ纏うものを失くして何だか寂しそうに見える。
じきに冬が来て、俺たちは箱根に行く。…予定。
いや、行くったら行く。
もちろん、舞も一緒にだ。
これから先の俺は、四季のどこに立っていても舞と過ごしたこの特別な日々に思いを馳せるんだろうな。
そんなことを考えながら、等間隔に照らされた道を歩いた。
目的の場所までは10分もかからずに到着する。
スマホを取り出し舞に発信した。
『もしもし。ユキくん?』
「お待たせ」
『シャワーでも浴びてた?』
「いや…」
視線を斜め上に投げる。
ちょうど街灯があって良かった。
これなら、よく見えるはず。
「会いに来た」