第12章 共に見る夢 ―ユキside―
それから二日後の夜、夕食を終えた後部屋で音楽を聞きながら寛いでいたところに、待ちわびた電話がやってきた。
『ユキくん?』
俺の名前を呼ぶ声がする。
数日前とは違い、温和で透明感のある耳に馴染んだ声だ。
「体はどうだ?声は元通りみたいだけど」
『うん。二日間病院で点滴してもらってきたんだ。そしたら一気に楽になって。もう熱も下がったし、咳も出なくなったよ』
「そっか、よかった。安心した」
『心配してくれてたんでしょ?お父さんに聞いた』
「そりゃあな。そばにいられなかったから余計に」
『ありがとう。明日の夕方から練習行くね。もう大丈夫そうだけど、念のため朝はお休みする』
「それなんだけどさ。舞に聞いておきたいことがあって…」
ハイジにも相談した、この先のこと。
舞の正直な気持ちが知りたい。
切り出した俺の話に相槌を打ちつつ最後まで聞いていた舞は、真剣な声で応える。
『私、ここで辞めたくなんてないよ。できることは少ししかないけど、これからもみんなと一緒に頑張りたい。お願い、続けさせて』
舞ならきっと、そう言ってくれると思ってた。
俺たちは同じ道の先を見ている。
"夢" と名前を付けるにはまだ不明瞭だった、あの頃からずっと。
「ありがとな。もちろん気持ちは嬉しいんだけどさ。やっぱり俺もハイジも舞たちの体が心配なんだよ。これから寒くなってくるし。だから朝晩のどちらかだけにするとか一日おきにするとか、練習を休む時間もちゃんと作ろう」
『わかった。今回みたいに心配かけちゃうくらいなら、無理のないようにする』
「うん。あ、雨とか雪の日は来なくていいぞ?それから疲れが溜まってたり調子が悪かったらちゃんと休むこと。舞だって他にやることあるんだから。んー…あとは…」
『ふっ…、何か豪ちゃんみたいな心配の仕方』
よりによってあいつの名前かよ。
「豪ちゃんねぇ…。あの兄ちゃん、相当舞のこと好きじゃね?」
『好きみたいだね』
え!?あいつの気持ち知ってんの!?
俺にしてみたら衝撃発言なんだけど!
舞のことだから、てっきり自分に向けられる好意には鈍感なのかと思っていた。