第11章 プレッシャー
「大きさも色も形も綺麗なものって、なかなか見つけられなくて。二つしかなかったんだよね。だから、ひとつはユキくんに」
「貰っていいの?」
「うん」
「サンキュ。これも、夏の思い出だな」
それぞれの掌の上で煌めく、同じ色をした石。
穏やかな波の音はまるでその石から奏でられているようにも聞こえて、自然と顔が綻ぶ。
「……俺も、あるよ。舞にプレゼント」
ポツリと呟かれた意外な言葉に驚いて、私は目を瞬かせた。
ユキくんは掌に収まるくらいの紙袋を取り出し、こちらに手渡す。
「何…?」
「開けてみて」
言われるがまま指先で中身を引き出してみる。
「かっ…、かわい…!」
目の前に現れたのは、小さなイヤリング。
ループ部分から連なったターコイズの石、そして白い貝殻のモチーフ。
華奢で女性らしいそれは、間違いなく私の乙女心を大きく揺さぶった。
「可愛い過ぎる!ユキくんが選んでくれたの!?」
「俺以外に誰がいるんだよ」
「そっか、 そうだよね!でも何で…」
「別に…意味とかねぇけど。舞に似合いそうだなって、思っただけ…」
先程立ち寄った雑貨屋さんで見つけたと言って、照れくさそうに視線を外したユキくん。
その仕草に、胸の奥から愛おしさがこみ上げてくる。
砂浜の上にしゃがみ込み、落とさないよう慎重にイヤリングを装着した。
手鏡に映る耳元でゆらゆら揺れる貝殻は、手に取った時よりも数倍魅力的。
「わぁ…ほんとに可愛い!似合う?」
「似合う」
「ふふふ!可愛い?」
「かゎ…、ぁ、うん…」
声を詰まらせたユキくんは、私と同じようにその場に腰を下ろした。
ユキくんは可愛いとか綺麗だとか、割と言葉で伝えてくれるタイプの人だ。
こんな風に言い淀むなんて何だか珍しい。
「ありがとう、ユキくん」
「ん…」
「……?どうかした?」
まるで王子くんみたいに三角に折った膝。
その上に肘を置いて、掌で顔半分を隠している。
黙り込んだユキくんに顔を寄せてみる。
「…!?」
その瞬間触れたのは…
ユキくんの、唇。