第11章 プレッシャー
「お店の配達もできるようにと思って、大学に入ってから免許とったんだ。少なくとも暴走運転はしてないはずだけど…」
「お願いしましょうそうしましょう!ね?ね!?ハイジさんっ!!」
王子くんはいつになく声高にハイジくんに詰め寄る。
「まあ、舞ちゃんがそう言ってくれるなら。たまにしか車に乗らない俺より運転にも慣れてるだろうしな」
「はぁ…。命拾いしました…」
「それならあいつも誘うか」
「ああ、そうですね…」
ハイジくんと王子くんは示し合わせたように頷いた。
「 "あいつ" ?」
「ユキだよ」
「舞さんと勝手に出掛けたとなったら鬼の形相でキレるでしょうから」
「えぇ…さすがにキレはしないんじゃ…」
「ユキさんて意外とヤキモチ妬きですよね」
「意外でもないだろ。ああ見えて甘えん坊だと思うぞ?」
「それは失礼。観察眼が足りませんでした」
ユキくん、甘えん坊とか言われてるよ!
本人が聞いたら猛烈に怒りそう…。
「舞ちゃんからユキにも話しておいてくれる?」
「わかった」
「じゃあ詳細は後日。先に帰ってるからな、王子」
「はい」
再び自転車に跨り、ハイジくんは現れた時と同じ様に颯爽とこの場を去っていった。
こんな経緯でドライブに出掛けることになった、私たち4人。
翌週の土曜日は運良く快晴。
長袖を着るにはまだ早いけれど、素肌を刺す暑さは明らかに数週間前とは違う。
朝練を終え、各々帰宅して準備ができたところで出発となった。
「舞、運転上手いじゃん」
「ですね。安心して乗っていられます」
走り始めて30分程が経った頃、ユキくんと王子くんが声を揃えてそう言ってくれる。
「上手いことはないと思うけど。安全運転は心がけるね。王子くん、酔ってない?」
車酔いしやすいという王子くんには、今回助手席に乗ってもらった。
「大丈夫です。記録会と合宿の時は酷いものでしたが」
「おーい。誰に対する嫌味だそれは?」
「あなたですよ」
どうやらハイジくんに悪態をつくくらいの元気はあるようで、ひとまず安心した。