第11章 プレッシャー
もう、何変な冗談言ってるの?
…なんて口を挟む隙もなく、王子くんは反撃に出る。
「お酒も飲んでないのに絡むのはやめてください。合宿の夜、みんなが寝てるのをいいことにキスしていた件、バラしますよ」
「さらっとバラしてんじゃねーか!」
やっぱり王子くんの方が一枚上手だ。
…じゃなくて!!
「王子くんっ!それ私にもダメージあるやつだから!」
「あ。すいません。舞さんもセットなの忘れてました。漫画を人質にとられたので、つい」
恥ずかしさのあまり、穴があったら飛び込んで地中深くまで埋まりたいくらいの私。
ただ、トレーニングを目的とした合宿に浮わついた感情を持ち込み、ユキくんと触れ合ってしまったのは事実。
ハイジくん、怒ってる…?
顔に篭もる熱を片手で隠しつつ、恐る恐る様子を伺う。
「まあ、そんなことだろうと思ったよ」
ハイジくんは意外にも朗らかに笑いながら、寛容に受け止めてくれていた。
「…練習メニューはちゃんとこなしてたんだから。そのくらい許せよ」
「別にダメだなんて言ってない」
「…おう」
「一人だけいい思いしてたのが少しだけ癇に障っただけだ」
「ちょっとムカついてんじゃねぇか」
「ははっ、冗談だ。箱根が終わったらユキの周りの女子を誰か紹介してくれ。沢山いるだろ?」
「だからそういう言い方するとまた舞が勘違いすんだろ!わざとか!?」
「わざとだ。ちなみにこの前ユキが外泊した日、誰とどこにいたのかも概ね見当はついてる」
「…っ!?親かお前は…」
仲良さそうに戯れるユキくんとハイジくんを、苦笑いで見守る王子くん。
その表情に安堵しつつ、ハイジくんのお母さんのような発言にまたもや体が熱くなる。
まともに目が合ったら気まずいと顔を背けた先。
カケルくんと視線がぶつかった。
途端、赤面してそっぽを向かれてしまう。
あの夜のこと…カケルくんにまで気づかれた…?
この日から数日、カケルくんが私に対して妙によそよそしくなったのは言うまでもない……。