第11章 プレッシャー
「舞ちゃんと王子、意外と気が合うみたいだな」
「…そうか?」
「妬くな妬くな。男の嫉妬はみっともないぞ?」
「違…っ、そんなんじゃねーよ!」
私たちの背後からじゃれ合う声が聞こえてくる。
ハイジくんとユキくんだ。
「妬く必要なんてないでしょう?二人きりの時はあんなに仲睦まじいんだから」
「何の話だ?」
含みを持たせた言い方の王子くんに、ハイジくんが尋ねる。
「合宿の夜、別荘のリビングで…」
「「わあぁーっ!!」」
何を暴露しようとしているのかを悟った私とユキくんは、声を揃えてそれを遮った。
白樺湖での夏合宿。
ユキくんと合流した日の夜のこと。
他のみんなが寝静まったあと二人きりになったリビングで、ひっそりとキスをした。
その瞬間をたまたま王子くんに見られてしまったのだ。
あのときの顔から火が出そうなほどの恥ずかしさが思い返され、一瞬で体中に熱が湧く。
「おいっ、見損なったぞ王子!そういうのは胸にしまっとくもんだろ!?そんな奴だとは思わなかった!」
「はい?元から "そんな奴" ですけど」
「何だ何だ?セックスでもしてたのか?」
「んな訳あるかっ!つーか露骨過ぎるわ!もっと言葉をオブラートに包め!!」
真顔でそんなことを聞いてくるハイジくんにさすがのユキくんもタジタジだ。
前々から思っていたけれど、ハイジくんには恥じらいという概念がないような気がする。
私はいまだに "セッ○○" という単語を口にすることすら恥ずかしいというのに…。
「ハイジさん、あまり過激なことを言わない方が。カケルが真っ赤ですよ」
王子くんの言葉で、みんなの視線が一斉に後方から歩いてくるカケルくん向けられた。
気まずそうにうつむいた顔は、確かに赤く染まっている。
「あの…そういう話はもっと小さい声で…」
「ところで。カケルは彼女できたか?」
「おっ、何だそれ?面白そうじゃーん!」
唐突にターゲットにされてしまったカケルくん。
ノリノリのハイジくんとユキくんは、カケルくんの両脇を固め逃がすかと言わんばかりに腕を拘束する。