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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第11章 プレッシャー



「舞ちゃん、今日も応援ありがとう」

「お疲れさま。ハイジくん、ユキくん」

みんなと合流した直後。
ハイジくんに呼び止められた。
その隣にはユキくん。

「みんなすごかった!先輩とキングくん、よかったね」

「ああ。本当によく頑張ってくれた」

「ハイジの鬼合宿にも意味があったってわけだ」

「鬼ってことはないだろう」

「自覚してないとこが一番怖ぇんだよ…」

冗談交じりの二人の掛け合いに小さく笑みを返す。
遠くからゆっくり歩いてくる王子くんに、チラリと視線を送った。
カケルくんの肩を借り脱力している様子から、体力の消耗が相当激しいことが伺える。


「なんか大人しくね?舞」

「…そんなことないよ」

「王子のこと、気にしてるのか?」

ユキくんにもハイジくんにも、私の心中などお見通しらしい。
揃って顔を覗き込んでくる。

「…大丈夫かな。王子くん」

「まだまだチャンスはある。予選会のエントリーまで記録会は3回あるからな」

「そうそう。何だかんだハイジのスパルタに付いてきてんだから。あいつならきっとやるよ。心配すんなって」

「私もそう信じてるけど、王子くんが抱えるプレッシャーを思うと…」

単に記録を出すだけの問題ではない。
精神的な重圧は、きっと私なんかの想像の比ではないと思う。


「変に気ぃ遣うことねぇぞ?舞がいつもどおりでいてやることも優しさだ」

「うん…。そっか、そうだよね」

「おう」

ユキくんの言うことはもっともだ。
気遣いが更なるプレッシャーになることだってある。
いつもどおりに。
王子くんの "いつもどおり" と言えば…。


「王子くーん!」

私の声で王子くんが顔を上げた。

「お疲れ様。自己ベストおめでとう!」

「ありがとうございます…」

「走ったあとのご褒美、持ってきたからね!」

王子くんの目の前に、トートバッグを掲げて見せる。

「?」

「借りてた漫画。バレーの。帰りの電車で読も?」

「…はい」

「私セッターの人好きだなぁ」

「1年の天才ですか?」

「その子も好きなんだけど、控えの3年生の方」

「ああ…、いいですよね、あの人」

少しだけ王子くんの表情が和らいだ気がする。
やっぱり彼のパワーチャージに一番効くのは漫画らしい。


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