第10章 ただ、好きなだけ ※
「あぁっ…!」
下腹部を満たすユキくんのものが、さっきまでとは違う場所を突いている気がする。
思わず上擦ってしまった声が恥ずかしくて、目の前にある首筋に顔を埋めた。
「きもちい?」
耳元でそう囁く声は、柔らかくて優しい。
「…うん」
素直にそう答えた。
「俺も。もっと気持ちよくなってみる?」
「…もっと?」
「そ。ちょっと激しくするから、痛かったら言えよ?」
私が小さく頷くのを見た後、ユキくんの両手は腰を掴んだ。
「んんっ…」
途端にググっと突き刺さった場所から全身へ広がる波。
堪えていたものなんて全て投げ出したくなるほどの快感が駆け巡る。
「はあ…、だめっ、これ…」
「痛い?」
「ううんっ…」
「だよな?すっげー、エロい声だもん」
こんなのズルイ。
私だけが恥ずかしい姿を晒しているみたいに、悪戯っぽい口調で意地悪を言われる。
まるでいつものお喋りみたいに。
ほんの少しでも仕返しできないものかと顔を上げた。
ところが。
「…ユキく、」
すぐそこにあるユキくんの顔は、予想に反して何かを堪えているようで…。
「舞の中、マジっ、やば…」
「きもちい?ユキくん、もっ…」
「はあっ…、きもち良すぎっ」
律動が激しくなった。
こんな風に突き動かされたら頭が真っ白になってしまう。
「や、だめっ、おかしくなっちゃっ…!」
「なっちゃえよ、どんな舞もっ、好きだから…」
二人の間の距離はゼロになり、肌と肌が密着する。
深いキスを交わし、お互いの瞳を見つめ合う。
妖艶とも言えるその視線に鼓動が大きくなった次の瞬間、胸にチリッと痛みが走った。
「ん…っ」
「悪い。付けちゃった 」
「…え?」
「俺の、印」
膨らみに咲いたのは、赤い華。
「見るたび思い出して。俺に、抱かれたこと」
胸が締め付けられるほどの愛おしさを覚える。
しっかり者で頼りになるのに、時にこの人は目が離せなくなるような儚さを見せることがある。