第10章 ただ、好きなだけ ※
初めての自分の体の変化に、どう思われているのか不安で堪らなくなった。
けれどユキくんはそんな私に幻滅するどころか "嬉しい" って。
もう、本当に、好きで好きで堪らない。
「…挿れるぞ?」
「うん…」
膜で包み準備を整えたユキくんは、私に覆い被さった。
優しい力加減でそっと両脚が開かれる。
初めて経験した頃と比べ、この行為でさほど苦痛を感じなくなった自分の体。
とは言え、セックスには快感が伴うものだという説には首を傾げてしまう。
きっと私の体が十分に慣れていないせいだと思う。
過去の彼氏と何度か体を重ねてみても、結合部の異物感と酷く軋むような鈍い痛みは拭えなかった。
だから来るべき重みを覚悟する。
今夜はユキくんさえ気持ちよくなってくれたら、それでいい。
そんなユキくんを感じることができたら、幸せ。
そう心の内で思っていたのだけれど―――
入口で馴染ませたそれは、難なく私の体に滑り込んでゆく。
「あ、んんっ…!」
その間わずか数秒。
けれども確かに走った、快楽という二文字。
身体にじんわりとその余韻を残しつつ、未経験の事態に呆然とする。
「痛いか?」
「…ううん」
「いっぱい濡れてたから、すぐに入っちゃったな」
濡れてた…から…?
そっか…。
私の知っているセックスとは、違うんだ…。
「すげ…熱…」
「んんっ、あぁっ…」
腰を揺さぶるユキくん。
そのたびに、恥じらいだとか劣情に対する後ろめたさだとか、悪あがきのように纏っていた皮が一枚ずつ剥がされていく感覚がする。
まるで私の体じゃないみたいに。
「ユキ…っ、く、あっ…」
白い体に手を伸ばし、温もりを催促した。
「やっべ、すっげ、気持ちいいっ…」
肌と肌を重ね、ギュッと抱きしめ合う。
「んっ、わたし、も、きもちい…」
さっきは恥ずかしくて言えなかった言葉。
今は、ユキくんがそうしてくれるようにちゃんと伝えたい。
こんなにも理性が置いてけぼりになるのは初めて。
体も思考も蕩けてしまいそう。
ユキくんが求めてくれるから、私も躊躇いなく委ねられる。
照明を落とした暗がりにも目が慣れてきた頃、ユキくんの手は私の腕を引っ張り上げた。