第10章 ただ、好きなだけ ※
「やあぁっ…、はぁっ、だめぇっ、ユキくんっ…!」
じゅるっ、という音が響いた。
と同時に、体中を駆け巡るように襲ってくる快感。
恥じらいのため何とか堪えていた声は、あっけなく喉から解放されてしまう。
太ももの内側に置かれたユキくんの掌が、この体勢から逃げることを許してくれない。
曝け出されたその場所で、舌がためらうことなく蠢いている。
「や、もぉ、だめ…!恥ずかし…っ」
「何で?何も恥ずかしくねーよ…」
舌の先端が、固くなった蕾を突いて執拗に行き来する。
大好きな人にこんな行為をされていることも、秘めていた部位を見られてしまっていることも。
そして、じっとりシーツを湿らせていく水分が経験のない程に溢れてしまっていることも。
顔を背けずにはいられない程の羞恥。
「ユキくっ、や、見ないでっ…、ホントっ、こんな、引いてない…?」
「引く…?何で?」
顔を上げたユキくんが腕の力を緩めた隙に、恥ずかしい場所を隠すべくピタリと両膝をくっつける。
「だっ…だって…、おかしいでしょ、わたし…。こんなに濡れちゃうの…変だよね?」
お尻の方まで伝ってきてる。
こんな風になったことないもん。変だよ、私の体。
ユキくんに幻滅されてたらどうしよう…。
「変じゃねぇよ、全然…。
……初めて?こんなに濡れるの」
「…うん、初めて」
「……そっか…。すげー、嬉しい」
「嬉しい、の…?」
「だってそれだけ気持ちよくなってくれてんだろ? 」
「……」
「違った?俺の勘違い?」
「……ううん、勘違い、じゃ…ない…」
「よかった。俺だけが知ってる舞じゃん。俺にだけこんな姿…堪んねぇよ…」
慈しむような瞳と声が、誤魔化しや慰めではないことを教えてくれる。
言葉のまま、ユキくんのありのままの気持ちだと受け止めていい―――そう信じられる。
甘いキスが降ってくる。
口内を丁寧に這う舌が潤った音を奏で、耳に触れた指先は髪の隙間を撫でていく。
「ぁ…っ、ん…ユキく…、すき…」
「俺も…」
ひとしきり深い口づけに溺れたあと、私を真っ直ぐに見下ろしたユキくんがため息混じりに囁いた。
「舞、…もう、限界」