第10章 ただ、好きなだけ ※
「すっげー、気持ちよかった。ありがと、舞」
私の体をギュッと抱き締めたあとに降ってくる、優しいキス。
それに応えながら、沸々と湧き上がる悦び。
目と目が合えば、ユキくんは申し訳なさそうに眉間に皺を寄せる。
「ごめん、手、汚したな…」
「大丈夫だよ」
シャワーのコックを捻り、温かいお湯でそれを洗い流してくれる。
嬉しい…
私だけじゃなかった。
二人で、同じ気持ちになれた。
トクトク鳴る大好きな人の鼓動に身を任せて、呼吸を整える。
「なあ、ベッド行かね?もう限界。舞と、したい」
艶やかに誘う声。
微かに乱れた呼吸のまま、私は小さく頷いた。
火照った体で二人ベッドへ移る。
室内のエアコンを効かせていたおかげで、ひんやり心地良いシーツ。
けれど冷ややかさを感じられたのはほんの始まりだけ。
すぐに二人分の熱で暑くなる。
「んっ、あ…」
組み敷かれた体に、キスの雨。
首筋も、胸も、腹部も、背中も、ウエストも。
ユキくんの唇が、私の全身を愛してくれる。
「はぁ…、っ…」
触れる箇所が移り変わるたび、疼きが広がっていくみたい。
淫らな私を見られてしまうことがどうしようもなく恥ずかしいのに、もっと触れて欲しい。
胸の中に潜むのは、そんな両極を彷徨う矛盾した感情。
「舞ってめっちゃ感じやすいんだな」
「え、わかんな…」
「エロい体」
ユキくんは執拗に私の一点を攻め続ける。
「んんっ…、ああっ…だめ、ユキく…っ」
「なにその声…可愛い」
だって、だって…
そこに唇が這うと…
「ココ、さっき気持ち良さそうにしてたよな?」
乳房をゆらゆら揺すられて、形が変わるほど揉まれ、お風呂でされたみたいに乳首を吸われる。
「んんっ…」
「一回お預け食らったからな。存分に堪能させてもらうぜ?」
意地悪で、甘くて、優しくて、官能的。
初めて知る、ユキくんの顔と声。
この先の展開を思うと羞恥も緊張も抱えているのに、一方では、私だけに見せてくれる姿に感動も覚える。
今日の夕暮れ時に突如訪れた嫉妬心を、幾分忘れてしまえるくらいに。