第10章 ただ、好きなだけ ※
呼吸が整ってくると、受け身のキスだけでは物足りなくなる。
貰った分のキスと同じだけ、私からもユキくんに口づけていく。
「ユキくん、も、興奮、してる?」
頬と唇にちゅっ、ちゅっ、と触れてから瞳を見つめる。
「そりゃな。舞のあんなエロいとこ見ちゃったら」
「当たってる、もんね…?」
泡の下に隠れているけれど、肌で感じる。
私の腰の辺りに主張してくる、固いものが。
「バレた?」
「うん…」
少し困ったような含み笑いが、何だか可愛くも見えてしまう。
ユキくんにも、気持ちよくなって欲しい。
私にしてくれたように。
でもどうしたら快感をあげられるのかなんて、私の拙い経験では自信が持てない。
「教えて?どうしたら気持ちよくなってくれる?」
見当違いなことをするくらいなら…と、思い切って尋ねてみる。
少しだけ視線を外して黙ったユキくん。
2、3秒考えてから私の手を取り、指を絡ませる。
「…手で、してくれる?」
「うん…」
「ここ、来て?」
泡の中をゆったり移動して、ユキくんはバスタブの外縁に腰掛けた。
そこで初めて目の当たりにする。
大きく猛った、男性を象徴するもの。
さっきユキくんの照れ笑いを見て、可愛い、だなんて思った私。
でも今度はそうはいかない。
思わず息を呑んだ。
天井を向く、赤みを帯びた逞しい塊。
色白で品のある線の細い体。
そのコントラストは、何だかアンバランス。
本当に本当に今更だけれど。
ユキくんは、男の人…なんだ…。
「やっぱ、無理言ったか…?」
「ううん!あの…当たり前だけど…ユキくんもこうなるんだ、と、思って…」
「こうしたのは、舞だけど」
そう言ったあと、手招きされる。
揺らめく泡の中を掻き分け、私もユキくんの隣に腰掛けた。
そっと、そそり立った場所に手を伸ばす。
「ちょい待って」
「…何?」
指で触れる寸前、言葉で遮られた。
立ち上がったユキくんはシャワーを手に取り、お湯を出す。
温かな飛沫が私の胸元に当てられ、白い泡はお腹から太ももにまで流れていく。
こんなことをしてどうするの?
「ユキく、え、やぁっ…」
浮かんだ疑問符の答えは、胸に走った刺激が教えてくれた。
ユキくんの掌で押し上げられた乳房のそのてっぺんを、ぬるりとした舌が這っていく。