第10章 ただ、好きなだけ ※
舌が混ざり合う音と、お湯の中のユキくんの手が行き来する音。
二つの水音が甘美な空気を纏い、加えてお互いの吐息がバスルームを満たしていた。
入り口をゆらゆら擦っていただけのユキくんの指が、そっと中へ入っていく。
「ぁ…」
いよいよ自分の体を上手く扱うことができず、与えられる愛撫に身を委ねるがままになってしまう。
「だいじょぶ?痛くね?」
「…ん」
耳元で私を気遣ってくれる声は、いつもより数段低くて優しい。
ううん…優しさというよりも、ユキくんの愛情そのものに思える。
好き…
本当に、ユキくんが、大好き…。
ユキくんの顔が見たくて、首を捻る。
薄っすら開けた瞼の向こう側に待っていたのは、慈しむような瞳。
その瞳に見つめられたら堪らなく欲しくなって、体を捩ってユキくんの肩に手を置いた。
「ユキ、くん…」
名前を呼んだだけで通じ合えた。
濃密な、けれどもどこか安らかなキスをくれる。
そうか…もう、任せてしまえばいい。
この人になら、私の全てを預けても大丈夫。
肉壁の途中で留まっていたままの指が、更に奥まで入っていく。
口内に差し込まれる舌と同じようにゆったりそこを行き来して、次第に激しさが増してゆく。
「ん…、はぁ、舞…」
キスの合間のユキくんのため息に、体がざわめいた。
なんて官能的な声を漏らすのだろう。
男の人の声にこれほど昂ぶったのは、初めて。
ゾクリと身震いする。
すぐそこに差し迫った、何か。
その正体は頭で理解できるけれど…
「やぁ、ど…しよ…っ、イッちゃ…」
「いいよ。イッちゃえよ…」
「ユキ、くっ、も、だめ…ぇ!」
身を投げ出されるような浮遊感、そして電流の襲った体が脱力していく。
自分で体勢を立て直すことは困難で、しなだれ掛かるようにユキくんの肩に顔を埋めた。
「イッちゃた?」
「うん…」
目を瞑った状態でわかるのは、蕩けるような甘い声と、重ねた肌の心地よさ。
浅く繰り返す呼吸の途中、私の体は力強く抱き締められた。
「あぁ、もう、ほんっと…可愛い…」
額に、目尻に、頬に。
そして、唇に。
柔らかな口づけが場所を変えながら何度も落ちてくる。
「くすぐった…」
一人で達してしまった恥ずかしさもあるけれど、ユキくんの愛情がじんわり伝わってきて思わず口元が綻んだ。