第1章 ふわり、舞う
「俺はもっと距離増やしてくれて構いませんけど」
「とりあえず、朝はみんなとメニューを合わせてくれ。個別のメニューは夕練の時にだ 」
さすがカケルくん。
5kmくらいじゃ、大して息上がっていないもん。
ハイジくんに言われて渋々頷いてはいるけれど、きっと物足りないくらいなんだろうな。
「おーっし!やるぞ!目指せ箱根!目指せ頂点!目指せモテ男!!ね、ユキさん!?」
「ジョージ!耳元でうるっせぇっ!本気になってんじゃねーよアホ!言っとくがなぁ、俺は箱根に行けるなんて今も思ってねぇからな!」
「こんだけ練習に参加しといて何言ってんだお前は!」
「そうだよ、何だかんだちゃんと走るくせにさ!」
キングくんとジョージくんに揃って突っ込まれ、ユキくんは釈然としない様子で二人を睨みつけた。
「クソ…アオタケはもうハイジに毒されちまったっていうのか…!」
「今日もやりましょうね、夜ジョグ」
「どんなコースにしようかなぁ」
ゲンナリするユキくんとは対称的に、ムサくんと神童くんの癒し系コンビは今から夜ジョグの相談らしい。
「ユキ先輩も一緒に走りましょう」
「今のやり取り聞いてたか!?何でそうなるんだよ。無理!俺には俺の時間が必要なの!」
「ニコチャン先輩は?」
ユキくんに断られた神童くんが次に誘うのは、ニコチャン先輩。
「ああ?朝夕だけで十分」
「そうだぞ。労れ、年寄りを」
「はあぁ!?」
ユキくんとニコチャン先輩は何やらじゃれ合っている。
数日見ていて思ったけど、この二人、仲がいいんだよね。
「舞ねーちゃんはどう?夜ジョグ!」
身を乗り出したジョータくんに私も誘われる。
「あ、ごめんね。今日は用事があって…」
「ただでさえ朝早くから付き合ってもらってんだから。無理言うな」
「へーい」
すかさずフォローしてくれるユキくん。
やっぱり優しいな…。
でも、できることなら今夜の予定より、夜ジョグの方に参加したいのが本音。
何故なら…