第9章 夏の星座 ―ユキside―

「舞のキス顔、すげーやらしい」

「や、目開けてたの…？見ないで…」

「恥ずかしい？」

「恥ずかしいよ…」

「かぁわいー」

「もう、ズルイ…」

「何が？」

「上目遣い、ズルイ…」

「え？」

確かに俺の脚に体が乗っている分、舞の方が若干顔の位置が上にある。
だからって、上目遣いって言うのか？コレ？
あざとい女じゃあるまいし。

「ユキくんあざとい！」

あざとい言われた！

「いやいや、どこがだよ！？」

「もうっ、色気が爆発してるんだから自覚して！」

「ワケわかんねー！」

「どれだけドキドキさせたら気が済むの…？」

眉尻を下げながら勢いをなくした舞は、小さな声でポツリと呟いた。

やっべ…何かすっげー嬉しいんだけど。

「なに？ときめいちゃった？」

「心臓、苦しいくらいドキドキしてる…」

「どれどれ？触って確認してみよっかぁ？」

なーんてな。


「…いいよ」


………いいの！？


おいおいおいおい！
触るって胸だぞ？ほんとに！？
いや、触れるもんなら触りたい…けど。
そこで終わるのもまた生殺し…。


「…引いた？」

不安げに伺ってくる舞の顔が、俺を崖から突き落とそうとする。
理性という崖から。

「……引くかよ。むしろ逆。舞だって俺をドキドキさせ過ぎだからな」

「ほんと…？」

「ん…。いいの？触って」

「うん… 」

そっと胸元に手を当てる。
伝わってくる胸の弾力に、コクリと息を呑んだ。

「ドキドキって、すごいでしょ…？」

「や、正直よくわかんねぇ…」


舞って着痩せするタイプ…？
胸の膨らみで鼓動が拾えないし、何より意識がそんなとこにあるわけなくて…。
舞の胸を触っている、という事実だけで頭がどうにかなりそうだ。

ほんの少し、指先に力が加わる。
わざとじゃない。無意識に、だ。

「…っ」

恥ずかしそうに小さく息を吐く音が聞こえる。
俺から目を逸らして、舞はキュッと唇を噛み締めた。

何だよ、その仕草…。
まさに理性崩壊寸前。