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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第9章 夏の星座 ―ユキside―



二人でお勉強。
明らかに舞とは違う意味のそれが、頭を埋め尽くす。

「そうだな、手取り足取り腰取り?色んなこと教えてやったのに」

「何かセクハラおじさんみたいなセリフ」

「うるせー」

繋いでいない方の手で、舞のほっぺたをムニッと摘む。

「やだもう!」

「セクハラオヤジとか言うから」

「オヤジとは言ってないもん」

憎まれ口を叩いたり、そうかと思えばはにかみながら体を寄せてきたり。
すごく可愛い。

ああ、好きだな…。



コンビニに着き、欲しいものをカゴに入れていく。
せめてもの贅沢に、一番高いスイーツ。酎ハイ2缶。それからお菓子も適当に。
会計を済ませて来た時と同じ道をまた二人で戻ると、20分程でコテージが見えてくる。
玄関へ続く坂道を登りかけたところで、舞の足はピタリと止まった。

「どした?」

「さっきの場所じゃダメかな?」

「さっき?湖?」

「うん。すごく綺麗な夜空だから。星の下で誕生日迎えられたら、嬉しい」

用意周到にはできなかった、特別な日。
だからこそ、今俺にできることなら何でもしてやりたい。

「わかった、行こう」

「ありがとう」

「寒くねーか?」

「ユキくんと手繋いでたら平気。あったかいもん」

「向こう着いたら、もっとくっついてよっか」

「…うん」

なんつー甘ったるいこと言ってんだ、俺は。
言ったそばから顔が熱くなっていく。
山の空気は澄んでいて心地いいが、この時間は冷ややかさも含んでいる。
今の俺には丁度いいその温度で熱を冷ましながら、またさっきのベンチまでやってきた。



「どれから行く?」

「ポッキー。お酒は日付変わるまでとっとく!」

「了解。どうぞ」

舞が選んだポッキーをビニール袋から出して、封を切った。

「ありがと。あ、ねえ。ポッキーゲーム」

「へ?ポッキーゲーム?」

「ユキくんやったこと、ある?」

「……」

説明しよう。
ポッキーゲームとは、二人でポッキーの両端を咥え少しずつ食べ進めてゆき、先にポッキーから口を離したほうが負けという合コンなどで行われるゲームのことである。
あわよくば女の子とキスできるかもしれない、的なラッキーハプニングを狙ったチャラいゲーム。
それをやったことがあるかって、彼女に聞かれている俺。


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