第6章 陸
御館様から任務を受けた杏寿郎は鬼殺隊士さえも消える列車へと向かった。
炭治郎、善逸、伊之助、禰豆子と共に戦い下弦ノ壱を倒したそうだ。
大半は杏寿郎が片付けたという。
幸いにも死者は出ず、任務を終えた事に皆ホッと一息着いた矢先にどこからともなく上弦ノ参は現れた。
鬼にならないかと誘われたが凛とした声で堂々と断った。
— 老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ。
— 老いるからこそ、死ぬからこそ堪らなく愛おしく、尊いのだ。
— 何度でも言おう、君と俺とでは価値基準が違う。俺は如何なる理由があろうとも、鬼にはならない。
人である事を貫き通し、最後の最後まで戦い抜いた。
致命傷を負いながらあと少しまで追い詰めたというのに、上弦ノ参は炭治郎の刀が刺さったまま逃げてしまった。
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話を聞き終え、は杏寿郎らしいと思った。
最後の最後まで柱としての務めを果たし、炭治郎と禰豆子のことを認めるとまで言ったのだ。
杏寿郎のおかげで死者は出ず、己の死だけで済んだことも含めて。
彼は母に言われた通りの人生を歩無ことが出来たのだと思う。
『やっぱり貴方は立派な人ですね…』
誰にも聞こえないような声でポツリと呟いた。
私にも同じことができるだろうか。