第6章 陸
慌ただしくも杏寿郎の全ての葬儀が終わった。
泣き疲れて眠った千寿郎を横に縁側に座り青空を眺める。
あの勇ましく強かった杏寿郎が敗れた相手、上弦ノ参。
師である彼が負けたとなると当然今のでは仇どころか太刀打ちすら出来ないだろう。
『まずは力をつけて炎の呼吸を極めなければいけない』
強い踏み込みをメインとした炎の呼吸を扱えるようにはなったが、杏寿郎のような強さはまだ身についていなかった。
女であると男である杏寿郎では踏み込みの強さも違えば、力も違う。
その分女としての利点もなかった訳では無い。
女であるが故の軽やかさや柔軟性がある。
これを活かして己だけの型を作ることが出来ればせめて太刀打ち位は出来るかもしれない。
拳をきつく握りしめ空を再度仰ぐ。
杏「君には無数の希望がある、俺の死に囚われて負けるな、乗り越えろ。」
『!』
目の錯覚か、ただの願望か、彼が見えた気がした。
どちらでも構わない、師範ならそう背中を押してくれるだろう。
必ず私の手で上弦ノ参を討ち取ってみせる。