第4章 肆
千寿郎side
その場に膝から崩れ落ちる、幼い頃に母上を亡くしてから父上は変わり果て唯一の救いは兄上だった。
そんな兄も任務で命を落としたと鎹鴉からの訃報を聞いた。
いつものように庭の掃除をしていた時だった。
兄上とさんのために今日の夕餉を考えている矢先の出来事。
耳を疑った、あの強く勇ましい兄が上弦の鬼という者と戦い亡くなったと言うのだ。
クルクルと回りながら尚も訃報を叫ぶ鎹鴉を呆然と見つめる。
手に持っていた箒は手からスルリと滑り落ち、地面に音を立てた。
ボロボロと涙が溢れ出す、兄上の温かい笑顔が浮かんでは消えてゆく。
元柱であった父の指導が無くなっても独学で剣を学び柱にまでなった兄、杏寿郎を誇りに思っていた。
剣の才能に恵まれなかった千寿郎にも強く優しい言葉をかけて励ましたのもまた、杏寿郎だった。
千「あ…に、うえっ…兄上ぇっ…うわぁぁ…」
その場に蹲り幼子のように声を上げた。
これから僕はどうすれば良いのですか、兄上、教えてください…。
千寿郎の悲痛な泣き声が響き渡った。