第11章 A Gray Cat
「こちらが本日諸君らの引率を務めていただく、護廷十三隊十番隊第八席――松本隊士だ!」
院生たちの前に並んだ数名の隊士のうち、いかにも彼らのリーダー格として先陣きって紹介されたのは、なんとも見事なスタイルを誇る金髪美女だった。
「十番隊の松本でーす。今日一日よろしく!」
あっけらかんとした物言いでそう挨拶した金髪美女に、それまで黙りこんでいた院生たちは蜂の巣をつついたような勢いで口々にざわめきだした。その例にもれず、沙羅もまた驚いた表情で隣のチームメイトたちを見遣る。
「……すっごい美人! 護廷隊にもあんなに綺麗な人がいるんだね」
「本当……」
「顔もそうだけど、あの胸見てみろよ。ありゃ~男のロマンだよなぁ、吉良?」
「なななにを言いだすんだ君は! ぼ、僕は別に鼻の下伸ばしてなんかっ!」
「いや誰もそんなこと言ってねーよ」
「違うんだ雛森くん! 今のは阿散井くんが勝手に――ぎゃっ!!」
真っ赤になって雛森に詰めよろうとした吉良は、突然後方から尋常でない勢いで蹴り飛ばされた。
「……え? え?」
そのまま沿道の木に激突した吉良は、鼻血を垂らしながらもわけがわからず首をキョロキョロとさせている。と、その首根っこを白い手がむんずと掴んだ。
「な――っ!」
「うるっさいわよあんたたち! ちょっとは黙って人の話を聞きなさいっての!」
右手を高々と掲げて吉良を宙づりにしているその女性こそ、今まさに彼らの注目を集めていた十番隊の女隊士であった。
「ったく、だから引率なんてやだって言ったのよ。近頃の院生って落ち着きのないやつばっかりだし」
「あ、あの……申し訳ありません」
早く解放されたいがために懸命に頭をさげる吉良をギロリと一瞥すると、金髪ダイナマイト美女は吉良の体を傍らで呆気に取られていた恋次に向けて放り投げた。
「どぅおおおお! 危ねェッ!」
「ぐわっ! なんでよけるんだよ! ここは受けとめるところだろう!」
「ふざけんな! オメーさっき俺のこと売っただろーが!」
「……れ、恋次! 吉良も黙って!」
沙羅の切羽詰まった声にふたりが振り向くと、すぐ目の前に豊満なバストが迫っていた。
「……あんたたち、耳、ついてる?」
ふたりの少年は今度こそ青褪めた。
*